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低音好きも注目! ゼンハイザー新完全ワイヤレス「CX True Wireless」を聴く

CX True Wireless(ブラック)

既報の通り、発売は7月8日とまもなくで、予約受付が既に始まっています。想定価格は17,380円前後と、2020年発売の従来機種「CX 400BT True Wireless」(以下、CX 400BT)の販売価格が発売当初は2万円台半ばだったことを思い返すと、ずいぶん手が届きやすくなりました。カラーはブラックとホワイトの2色が用意されます。

ここでCX 400BTがどんな完全ワイヤレスイヤホンだったかをかんたんに振り返ってみましょう。ノイズキャンセリング(NC)機能を搭載し、「音質に妥協はいらない」をキャッチコピーに掲げた上位機種「MOMENTUM True Wireless 2」(実売約35,750円)のサウンドや、耳にフィットして外の音を遮音する設計を継承しつつ、NCや外音取り込み機能、防水性能などを省いて低価格化したのがCX 400BTでした。

じっくり聞き込んでいくと、MOMENTUM True Wireless 2に引けを取らないクリアなサウンドを楽しませてくれるCX 400BTには個人的に強く惹かれ、筆者が所持している有線イヤホン「IE 40 PRO」と比べてもCX 400BTはワイヤレスであることを忘れるくらい、素直にイイ音だと感じていました。ただ、次々に新機種が投入され、低価格化・多機能化が進む完全ワイヤレスイヤホン市場において、2万円台半ばという価格は言わば“高嶺の花”。2021年に入ってからはたびたびCX 400BTのセールが実施され、そのタイミングで手を伸ばしたという人も少なくないのではないでしょうか。

そんなCX 400BTの後継機として登場するCXは、ゼンハイザーのファンの裾野を広げる「CXシリーズ」の中核を担い、“CXを継ぐもの”と位置づけられています。MOMENTUM True Wireless 2と同等の7mm径トランスデューサー(ドライバー)を搭載して音質にこだわりつつも、約1.7万円という購入しやすい価格を実現。さらに、CX 400BTでは非対応だったIPX4防水に対応するなど、CX 400BTに寄せられたユーザーからのフィードバックも盛り込み、ブラッシュアップしました。

ゼンハイザーらしい、ナチュラルな中音域と繊細でクリアな高音を追求したCXですが、若い世代からは「(CX 400BTの)低音をもう少し豊かにしてほしい」という要望が多かったそうで、CXのために低音をブーストする「Bass Boost」機能がiOS/Androidアプリ「Smart Control」に加わりました。同機能をオンにすると、存在感のある低音が楽しめます。なお、CX 400BTも同じアプリでイコライザ調節や各種設定が行えますが、今のところBass Boost機能は利用できないようです。

音を聴いてみる

iPhone 12 miniと従来のCX 400BTや新機種のCXをAACコーデックを使って接続し、坂本真綾「お望み通り」やDaft Punk「Get Lucky」などCD音質(44.1kHz/16bit)の楽曲をいくつか選んでサウンドを聞き比べました。

低音好きも注目! ゼンハイザー新完全ワイヤレス「CX True Wireless」を聴く

両機種は音場の広さや音の広がり方が結構ハッキリと違っていて、ある程度ほわっと目の前に音が広がるCX 400BTに対して、CXはクリアなサウンドをギュッと目の前に集めて鳴らしてくれる感じがします。しっとりしたジャズやクラシックも楽しみたい筆者はCX 400BTのサウンドのほうが好きですが、ポップスやロック、アニソンなどを聴くなら断然CXに軍配が上がります。

アプリのイコライザで好きなサウンドにチューニングできるので、好みに合わせて音をいじっていく楽しみ方もありますが、あえてイコライザを触らずに「Bass Boost」をオンにしてみると、文字通り楽曲のベースのうねりがグッと前に出てきてダイナミックに変化。アップテンポな曲、特にヒップホップやハウス、エレクトロニカ、EDMとは相性がとても良さそうで、再生してみた曲の中では、Clean Bandit「Rather BE(feat. Jess Glynne)」のパワフルかつキレの良い低音リズムや伸びやかな歌声がよくマッチしていた印象でした。

Bass Boostを活用することで、屋外でのランニングなどの良き相棒になってくれそうです。耳へのフィット感とパッシブな遮音性能も抜群で、頭を大きく振ったくらいでは耳から抜け落ちることもありません(個人差はあります)。

ちなみに、YouTubeやAmazon Prime Video、ABEMAといった主要な映像配信サービス利用時の音ズレはほとんど気になりませんが、ゲームプレイ時は詳細に測ったわけではないものの体感上の遅延が大きく、こういった用途では少々シビアな面もあります。

新生「CX」の外観をチェック

CXのサウンドはそれまでのCX 400BTとはだいぶ違いますが、見た目にも実は細かな違いが。まず、充電ケースのサイズはCXのほうがほんのわずかに小さく見えます。充電状況を表すLEDは、CX 400BTでは背面にありましたがCXは表面に移り、充電容量をLEDの光り方でチェックするための確認ボタンはCXでは省略。ワイヤレス充電にはCX、CX 400BT共に対応していませんが、充電時のケーブル接続の手間が省ける便利な機能なので、次期モデルではぜひ対応して欲しいところです。

イヤホン本体のタッチセンサー部は、CX 400BTにあったツルッとしたはめ込みパネルがCXでは省かれ、一体成型のようなデザインでザラッとした梨地調の仕上げに変わりました。充電用の接点の数や、耳に当たる側の成型加工の仕方にも違いが見られます。さらに、CXは通話性能を強化しており、マイクを片耳に2つ、左右合わせて4基搭載し、ビームフォーミング技術も採用。従来機は片耳利用できるのは右側イヤホンだけでしたが、CXは左右どちらでも片耳で利用可能です。

ぱっと見ではどちらが新機種か区別が付きにくいのですが、よく観察するとこのようにいろいろ違いがあり、判別の手がかりがあることが分かります。ちなみに外からは見えませんが、CX 400BTやMOMENTUM True Wireless 2で接続性を高めるために備えていたLDSアンテナは、CXでは非搭載になりました。ただしスマートフォンなどのデバイスとの安定した接続性能を追求しており、「(接続性は)CX 400BTよりも上」とのこと。実際に人通りの多い駅前などで、ズボンの尻ポケットにスマホを入れた状態で使ってみても、音途切れは発生しませんでした。

最後に、CXは低音重視サウンドのイヤホンではなく、またスポーツタイプでもありませんが、CXの価格帯や音の傾向を踏まえると直接のライバルもしくは比較検討の対象として挙がるのは、ソニーのEXTRA BASS完全ワイヤレス「WF-XB700」(実売約14,300円)になると思われます。

大人っぽくスマートなCXと、ワイルドでやんちゃっぽいWF-XB700、といった感じでデザインの傾向は割と異なりますが、1万円台の完全ワイヤレスイヤホンとしてはどちらも甲乙付けがたい仕上がりになっています。今夏のオンライン音楽フェスなどのお供として1台検討してみるのもよさそうです。

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