イヤフォン → 「公安委員会遵守事項違反」というナゾの違反、何をすると該当するのか? | モーサイ

「公安委員会遵守事項違反」というナゾの違反、何をすると該当するのか? | モーサイ

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、人との「密」を避ける行動が求められるようになった。これをきっかけに運転免許を取得したり、普段は電車で通勤している人でもバイクやクルマで運転するという機会が増えたかと思われる。

その中にはペーパードライバーなどもいるかもしれないが、皆さんは「公安委員会遵守違反」というものを聞いたことがあるだろうか。おそらくほとんどの人が聞いたこともない、そんな交通違反で警察に検挙されたことがないだろうが、実はラフな格好で運転していたり、イヤホンを着けながら運転していたりする人には注意してほしい違反なのだ。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、人との「密」を避ける行動が求められるようになった。そのため、これをきっかけに運転免許を取得したり、普段は電車で通勤している人でもバイクやクルマで運転するという機会が増えたかと思われる。

そこで当記事では、「公安委員会遵守違反」とはなんなのか、違反点数や反則金など、元警察官・刑事の鷹橋 公宣さんが解説していく。


そもそも公安委員会とは?

公安委員会とは、簡単に役割を説明すると「警察の運営を管理する組織」です。主に運転免許の事務や交通規制をするほかにも、風俗営業・古物商・探偵業・運転代行業などの許認可も公安委員会の仕事となります。ただ、一口に公安委員会といっても「国家公安委員会」と「都道府県の公安委員会」がありますが、この「公安委員会遵守事項」を定めているのは都道府県公安委員会です。

とはいえ「警察の運営を管理する組織」といっても、警察よりも偉い立場ではありません。あくまで警察の業務が適切かどうかを管理・監督する立場で、警察が行う個別の職務に対する権限を持っていない……いわば「警察のお目付け役」のような存在です。

「公安委員会遵守事項違反」にあたる行為ってなに?

では、「公安委員会遵守事項」が何かと言うと「道路または交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るために必要と認めて定めた事項(道路交通法第71条6号 )」で、すべての運転者が守らなければいけない決まりです。

また、公安委員会が受け持つ業務のうち、市民の生活に大きく関わっているのが「交通規制」です。皆さんが日ごろ当たり前のように見かける信号機や交通標識、道路の車線などは、すべて公安委員会の意思決定のうえで、設置されています。

「公安委員会遵守事項違反」というナゾの違反、何をすると該当するのか? | モーサイ

しかし、「危険防止や交通安全のために必要な事項」といわれても、曖昧な表現すぎて意味が分かりませんよね。実は各都道府県の公安委員会が定める「道路交通法施行細則」に記載されています。

たとえば、東京都には「東京都道路交通規則」が定められており、第8条に次のような事項があります。

どの項目をみても、「なにそれ?」「それも違反なの?」と感じるかもしれませんが、クラクションが壊れたから放置したり、太陽が眩しいからといってカーテンを着けるなど、時折そういった人を見かけますよね……。

ちなみに、公安委員会の遵守事項は各都道府県によって内容が微妙に異なります。埼玉県の「埼玉県道路交通法施行細則」では、次のような点が東京都と異なっています。

「公安委員会遵守事項違反」は、違反点数の加算がありません。ただし、大型車では7000円、普通車や二輪車では6000円、小型特殊や原付の場合は5000円の反則金が科せられます。

「公安委員会遵守事項」の中でよく検挙される違反とは?

「公安委員会遵守事項」の中でもっとも検挙されやすいのが「サンダル・下駄」など履物の違反です。実際の交通取締りの現場でも、こんなやり取りが起きます。

警察官:はい、ちょっと止まってくださいドライバー:あれ? 私、なんの違反もしていませんよ?警察官:いえいえ、シートベルトをしていないように見えたから停止してもらったんですけど、ちゃんと装着していましたね、すみませんでしたドライバー: よく見てよ! 善良なドライバーを止めるんじゃなくて、もっと危ない違反を取り締まってよ!警察官:ところで、ちょっと足元を見せてもらっていいですか?ドライバー:(なんだよ…めんどくさいな)警察官:あれ? サンダルだと脱げてブレーキ操作を間違えるかもしれないから、そのまま運転しちゃダメってことをご存じではありませんか?ドライバー:え? そうなんですか? いや、ちょっとコンビニまで行くだけだから……。警察官:うーん、それは「公安委員会遵守事項」の違反になるんですよね。違反切符を書くので、車から降りてパトカーに乗ってもらえますか?

楽に履けるスリッパやサンダルで外出し、会社に着いたらビジネスシューズやハイヒールなどに履き替えるなんてことをしていると、警察官から職質を受けることになり、切符処理されてしまうので要注意です。

なお、スリッパやサンダルでも「鼻緒があるものはOK」「かかとのバンドを止めていればOK」というように、ごく一部のケースでは問題ないと判断されるようです。仕事の都合などで履物を使う事情がある方は、一度最寄りの警察署の交通課に問い合わせて確認しておきましょう。

なぜ、取締りを行うかというと、それはもちろん安全のため。楽に履けるサンダルや下駄は、安全面から見てもサンダルが脱げてアクセルやブレーキを踏み誤ってしまったり、ブレーキペダル下に履物が挟まってペダルが踏めなくなる可能性もありますので大変危険な行為だからです。お坊さんや巫女さんなど、職業上の都合で履物を使うケースがあるかと思いますが、できる限りサンダルや下駄で運転はしないようにしましょう。

レポート●鷹橋 公宣 編集●モーサイ編集部・小泉元暉

プロフィール

■鷹橋 公宣(たかはし きみのり)

元警察官のwebライター。 現職時代は詐欺・横領・汚職・選挙事件など知能犯刑事として勤務。退職後はwebライターとして法律事務所のコンテンツ執筆のほか、noteでは元刑事の経験を活かした役立つ情報などを発信している。

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