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超コスパスピーカー「SB-C600」、“計22万円で揃う”Technicsの音に驚く

見た目は小さいが、中身はヤバい

前の記事でも書いたが、テクニクスのオーディオ製品は上位シリーズから順に「Reference Class」「Grand Class」「Premium Class」という3つのラインで展開されている。中でも、SB-C600は最も手に入れやすい価格帯の「Premium Class」に属している。

いきなり結論から言うと、このSB-C600、エントリーラインとは思えない圧倒的な技術投入がされた、とんでもないスピーカーだった。僕は昨年から今年にかけて、かなりの数のエントリークラスのスピーカーをレビューしているが、その音に心を奪われた度合いで言うとSB-C600はトップクラスだった。

まずはSB-C600のアウトラインから解説しよう。本スピーカーは、テクニクススピーカーの伝統である点音源とリニアフェーズ思想を受け継ぐ、同軸型の2ウェイ・ブックシェルフ型だ。エンクロージャーの外寸(幅×高さ×奥行)は173×293×283mm、重量は6.3kgで、一般的なブックシェルフスピーカーのサイズ感と同じ。つまりHi-Fiスピーカー激戦区へテクニクスが投入した意欲作だ。

再生周波数帯域は40Hz~100kHzと実にワイドレンジで、特に高域の伸びが印象的。比較的小型のモデルでありながら、ハイレゾのメリットの1つ高域の限界周波数に対応しているところは頼もしい。

SB-C600は「動と静」というコンセプトを掲げている。これは、同軸型のスピーカーユニットで明瞭な音像定位と、透明感のある音色を作り出し、さらにレスポンスの優れたフロントバスレフポートと合わせ、正確な「動」を表現するというもの。そして不要振動を大きく抑える“重心マウント構造”で「静」を追求しているのだ。

新開発の「Advanced Phase Precision Driver」。中央の銀色の部分がLinear Phase Plugだ

もう少し詳しくご説明しよう。スピーカーユニットは新開発の「Advanced Phase Precision Driver」が採用される。一般的な2ウェイスピーカーは、高域を担当するツイーターと中低域を担当するウーファーが上下に別れて搭載される。要するに、見た目としては2つのユニットが搭載される。一般的には上部のユニットが高域、下部のユニットが中低域を担当する。

しかし、SB-C600のような同軸型ユニットは外観上はユニットが1つだ。ユニット内に高域と中低域をそれぞれ担当する2つの振動板が存在し、中央部が高域、その周りの振動板が中低域を受け持つ。これにより、音が文字通り“同軸上から出て”点音源を実現。ステレオ再生の醍醐味である、2本のスピーカー中央に現れる音像表現や立体的なサウンドステージを表現する。

ただ同軸型は、2つのユニットの干渉を抑えなくてはいけないなど、技術的な難易度も低くない。それに対しテクニクスでは、ツイーター部が担当する高域の位相特性を補正する「Linear Phase Plug」を配置して、「振動板のドームの高さの違いに起因した位相差を低減」、「視聴者まで到達時間の速い振動板中心部の波面と振動板周辺部の波面を揃える」、「球面波を整え、崩さずにそのまま前方へ導く」という3つの機能を持たせている。

超コスパスピーカー「SB-C600」、“計22万円で揃う”Technicsの音に驚く

さらに、ツイーターとウーファーはどちらもアルマイト処理されたアルミニウム振動板素材を採用することで、音色を統一している。つまりSB-C600は、音像定位と音色の両面で2つの異なるユニット統一化しているわけだ。ツイーターとウーファーのクロスオーバー周波数は2kHzとなっている。

バスレフダクトはフロントに装備

また、フロントに備わるバスレフダクトにも工夫が施されている。航空機の翼断面形状に着目して流体解析技術を用いたポート形状は、新開発の「Smooth Flow Port」を採用したことで、出口付近の流速を均一化することに成功。さらに、ポート表面には突起形状のフィンがあり、それがボルテックスジェネレーターのように機能する(まるでF1マシンの空力のようだ)。これによりバスレフ式のスピーカーで時折指摘される、バスレフポートからの風切音などのノイズを低減し、レスポンスの良い低域を狙っている。

と、この部分がいわゆる「動」の部分。続いて「静」を担保する、キャビネット周りの話をしたい。

SB-C600はおおよそエントリーモデルとは思えない、凝ったキャビネット構造を持つことが大きな特徴だ。強固なキャビネット「High-rigidity Cabinet」を採用し、さらに重心マウント構造「Balanced Driver Mounting Architecture」を同社のブックシェルフスピーカーとして初めて採用した。

一般的なスピーカーユニットはフロント側に軽量な振動板、リア側には重量のあるマグネットやコイルが装着される。通常、スピーカーでは、そのスピーカーユニットをフロントバッフルにビスなどで固定するが、必然的に重量のあるリア側がフロントバッフル後方にぶら下がってしまい、重量バランスが悪くなる。

それに対し重心マウント構造を採用したSB-C600は、エンクロージャー内部に21mmの厚みを持つMDF製のマウントバッフルを設けており、そこにユニットを固定する。

左が一般的なスピーカーのユニット固定方法、右が重心マウント構造のイメージ

これにより、振動板が振幅したときの重心バランスが改善され、ユニットの上下左右の揺れが減少、正確な振動板ストロークを実現した。さらにキャビネット自体の振動が大きく減少するので、スピーカースタンドに設置した場合と、家具上に設置した両方の環境で、外部に伝わる振動も低減される。

さらにこのマウントバッフルは、エンクロージャー内部の空気の流れも損なわないように最適化し、ユニット背面から出る音の流通性にも配慮するとともに、エンクロージャー全体の剛性を高める効果も持つ。実にクレバーな手法なのだ。

実際の製品内部。分厚いMDF製のマウントバッフルが内部にあり、そこにユニットが固定されているのがわかる

しかし、生産工程ではユニットの取り付けに長尺のドライバーが必要となるなど生産効率は下がってしまう。そう考えると、よくこの価格帯のモデルにこの技術を入れたなと感心した。

他にも、メタライズドポリプロピレンフィルムコンデンサーや積層鋼板コア型コイルを採用したネットワーク回路や、金メッキ加工された真鍮製スピーカーターミナルの搭載など、とても10万円とは思えない先鋭的な技術アプローチと高品位パーツが搭載されている。

ただ、スペックを確認していくと1つだけ心配な点も見つけた。それは本スピーカーの出力音圧レベル、いわゆる能率で、83dB/2.83V(m)、80dB/W(m)とけっこう低いのである。

背面のスピーカーターミナル

近年のブックシェルフタイプは低域の表現力(簡単に言えば迫力)を上げるために、振動板のピストンモーションの振幅が大きいことを始め、能率が低いモデルが多い。しかしその中でも本スピーカーの能率は低めで、カタログスペックを真に受けるなら、「かなり程度駆動力のあるアンプでないと低域の迫力不足やキレが悪くなりそうだな」と心配性の僕は感じてしまった。このあたりについても、実際の試聴でチェックしていこう。

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